研究概要 |
イソクエン酸脱水素酵素(ICDH)は多くの生物から単離されており,細菌由来のICDHのほとんどは補酵素としてNADP^+を要求する.これに対し,我々が見出した化学合成独立栄養細菌Acidithiobatillus thiooxidans由来のICDHはNAD^+依存型である.また本酵素はアミノ酸配列や反応機構など細菌由来の3-イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素(IPMDH)と類似している.本酵素の結晶構造解析を行いNADP^+依存型ICDH,及びIPMDHとの比較検討を行うことにより,基質認識機構,補酵素認識機構の解明に役立つと思われる.そこで今年度は本酵素の結晶構造解析を行った. まずICDH大量発現プラスミドpKKICDHを用いて大量精製を行った.酵素精製は熱処理60℃,5minの後,DEAE-ToyopearlとSephacryl S-200HRの二つのカラムに供する事で行った.電気泳動により単一に精製されていることが確認されたので,この精製酵素を用いて結晶化を行った.その結果,ICDH-NAD^+複合体の状態で,四角両錐の結晶が得られた.この結晶は,空間群P4_32_12,格子定数a=b=125.99Å,C=268.35Åのパラメーターを持つ。Os置換体を用いて位相を決定し、分解能1.9Åでの精密化を進めている。また,この解析により,ニコチンアミドのリボースの酸素がThr105の主鎖に配位,固定されており,このためC-dループの構造がNADP型ICDHと大きく異なっていることがわかった.一方,基質特異性の検討のため,活性中心のSerをGluに置き換える部位特異的変異を行い,変異酵素pKKICDH-S113Eを作成し,酵素精製及びイソクエン酸に対するKm値を求めた.その結果,野生型酵素と比べて比活性が0.8%に低下し,Km値は40倍に増加した。今後はさらに解析を進めて,補酵素及び基質の認識機構の全容を明らかにする予定である。
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