研究概要 |
外膜シトクロムb5は、同じ動物において臓器により、また、同一臓器においても動物種により細胞内局在場所が異なる。また、動物の生理的状態の変化に伴い局在場所が変化するので、タンパク質の輸送・局在化過程を制御する新たな機構、および輸送過程がターゲティングシグナルとその受容体のほかに存在すると思われる。本研究では、外膜シトクロムb5をモデルタンパク質としてこの新たな機構を検討した。 1.ラットにデキサメサゾンを投与すると肝臓の外膜シトクロムb5(OMb)が時間とともにミトコンドリア画分からミクロゾーム画分への移行が見られた。この現象はラット肝臓由来の培養細胞RLCにおいても観察された。 2.ミクロゾーム画分への移行が、小胞体であることをBipタンパク質を標識とした免疫蛍光顕微鏡観察により確認した。 3.この移行はタンパク質合成阻害剤(シクロヘキシミド)で阻害することは出来ず、新たなタンパク合成を伴わないことが示唆された。また、移行にはATPの存在が必要であった。 4.細胞骨格系の阻害剤を用いて小胞体への移行に対する影響を検討したところ、nocodasol, cholhicinで阻害されるが、cytochalacin Bでは阻害されず、微小管の関与が示唆された。 5.OMbと機能的に関連している他の成分の挙動を調べたところ、NADH-b5還元酵素やセミデヒドロアスコルビン酸還元酵素の移行は見られず、OMbがこれらの成分とは独立に移行していることが示唆された。 以上の結果から、デキサメサゾン投与によるOMbのミトコンドリアから小胞体への移行はATPを必要とする微小管が関与する機構で、OMbの関与する既知の代謝系の他の成分とは独立に行われていることが示唆された。
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