小胞体膜酵素であるb_5の構造類似体としてラットミトコンドリア外膜に存在が確認されたOMbは長い間生理機能不明タンパク質であった。この酵素が動物へのフェノバルビタールやデキサメタゾンなどの薬物処理によりミクロソームに移行することを見いだした。細胞内分布の詳細な解析により、OMbの移行先は小胞体であることが判明した。この膜移行には新規タンパク質合成が不要で、既存のタンパク質の活性化が関与していることが培養細胞を用いて示された。肝臓以外の臓器・組織では、OMbはミトコンドリアと小胞体にほど均等に分布していた。精巣でもOMbは両オルガネラに存在していたが、b_5は検出されなかった。精巣ではP-450_<17α>のリアーゼ反応を高め、アンドロゲン合成を促進するのがb_5の機能の一つであるというのが定説であったが、精巣でのOMb機能解析の結果、従来信じられていたb_5ではなくoMbがP-450_<17α>の活性化を引き起こし、アンドロゲン合成を高めることを証明した。OMbの精巣内での分布はP-450_<17α>と一致して、アンドロゲン合成を司るライディッヒ細胞のみであった。そこで、他の組織に関してもOMbの機能を明らかにするため、組織局在を調べた。その結果、副腎皮質ではOMbとb_5は異なった分布をし、脳では小脳で運動調節に関与するプルキンエ細胞、大脳で生理活性物質を脳脊髄液として生産し脳内に送る脈絡叢の上衣細胞にP-450_<17α>と共存し局在していることが判明した。プルキンエ細胞がプロゲステロンからアンドロゲンを経由しテストステロンを生成することを証明し、OMbが小脳でのアンドロゲン合成に関わっている可能性を見いだした。これらの事実は、単にホルモンバランスのみならず、高度な生命活動にもOMbとb_5が関与していることを示唆している。
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