研究課題/領域番号 |
14580653
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
和久 敬蔵 帝京大学, 薬学部, 教授 (90013854)
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研究分担者 |
山下 純 帝京大学, 薬学部, 助教授 (80230415)
杉浦 隆之 帝京大学, 薬学部, 教授 (40130009)
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キーワード | アラキドン酸 / 2-アラキドノイルグリセロール / カンナビノイド / 小脳スライス / アクチン重合 / 炎症・免疫 / ナチュラルキラー細胞 / 遊走 |
研究概要 |
1.カンナビノイドCB1受容体が多量に発現している脳組織における2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)の産生を、ラット小脳スライスを用いて調べた。脱分極刺激により2-AGの量はコントロールに比べて著しく増大した。一方、アナンダミドの量は非常に低いものでしかなかった。また、グルタミン酸で刺激した場合にも2-AGの産生増大が観察された。CB1受容体アンタゴニストであるSR141716Aにより脱分極の際のグルタミン酸の放出が有意に高まることは昨年度報告したが、今回の研究で、神経伝達の際に活性化したシナプスから放出されたグルタミン酸が2-AGの産生を促進し、シナプス間隙に放出された2-AGが、主に前シナプスに発現しているCB1受容体に作用して、グルタミン酸の放出を抑制的に制御するということが明らかとなった。 2.昨年度の研究で、2-AGがCB2受容体を介してマクロファージ系の細胞を遊走させることを見い出した。今年度の研究では遊走の機構を詳しく調べるため、2-AGがアクチンの重合を引き起こすかどうかを調べた。マクロファージ様に分化させたHL-60細胞に2-AGを添加すると、アクチンの重合が速やかに起きることが分かった。アクチンの重合は、CB2受容体アンタゴニストであるSR144528又は百日咳毒素処理により、完全に阻害された。また、2-AGはマクロファージ系の細胞以外にも、CB2受容体が発現しているナチュラルキラー細胞の遊走も引き起こすことが分かった。2-AGによるナチュラルキラー細胞の遊走も、CB2受容体とGi/oを介したものであった。 3.マウス腹腔にカラゲニンを投与することにより作製した急性炎症モデルにおいて、2-AGの量が大きく増大することを見い出した。2-AGは腹腔洗浄液の細胞画分ではなく、上清中から検出されたことから、炎症局所で生成した2-AGは、産生後速やかに細胞外に放出されると考えられた。炎症部位での2-AG生成の生理的意義については、更に調べる必要があると思われる。
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