ヘビ毒に含まれる様々な生物活性を有する種々のC型レクチン様ドメイン含有蛋白質のゲノム構造を解析する試みの第一歩として、まずハブ・ゲノムライブラリーを作製し、このライブラリーより血液凝固IX因子/X因子結合蛋白質(IX/X-bp)(A・B2つのC型レクチン様ドメインが一つのS-S結合で繋がったヘテロダイマー)のA鎖遺伝子を単離し、塩基配列を解析した。その結果、このC型レクチン様ドメイン一個からなる蛋白質コード遺伝子には、他のC型レクチン(様)ドメイン遺伝子には無い特徴的なイントロンの存在が明らかになった。 すなわち、ハブ血液から細胞分画により白血球を分離し、定法に従ってゲノムDNAを抽出した。得られたゲノムDNAを制限酵素Sau 3A1で部分切断し、アガロース電気泳動により断片の大きさを確認後、制限酵素Bam H1で切断したベクターLambda EMBL3にライゲーションした。これをパッケージングして、1.6x10^5個の独立したクローンを含むハブ・ゲノムライブラリーを作製した。ハブ毒腺cDNAライブラリーより単離したIX/X-bp A鎖cDNAを含む大腸菌クローンを培養し、プラスミドを調製した。これから、インサートDNAを制限酵素Sal I及びNot Iによる消化により切り出してA鎖全長cDNAとし、これをDIGラベルすることにより、A鎖全長プローブを作製した。また、A鎖全長cDNAを制限酵素Bss HIIにより切断し、IX/X-bp A鎖のN末端側約1/3を含むA-5'cDNAと、IX/X-bp A鎖のC末端側約2/3を含むA-3'cDNAを調製し、これらもDIGラベルした。 上記ハブ・ゲノムライブラリーについて、DIGラベルしたA鎖全長プローブ等を用いてスクリーニングし、IX/X-bp A鎖遺伝子を含むクローンを単離し、その塩基配列を解析した。その結果、IX/X-bp A鎖遺伝子はこれまでに知られている動物レクチン遺伝子のうち、第VIIグループのC型レクチンに似たエキソン・イントロン構造を有していることが判った。遺伝子中心付近に挿入されたイントロンは、アシアロ糖蛋白質受容体など他のC型レクチン遺伝子にはみられないもので、IX/X-bpに特徴的なドメイン・スワッピングとの関連が示唆された。
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