本研究では、ヒトSWI/SNF複合体の最も高分子量の構成成分であるOsaの機能を明らかにするため、まず、drosophilaのOsaとの相同性から、hOsa-1およびhOsa-2のクローニングを行った。両者は共通してARID(AT rich interaction domain)とC末よりに2つのdrosophilaと高い相同性をもつ領域を有していた。Co-immunoprecipitationにより、このC末領域が、hBRGやBRMとの結合に重要であることがわかった。hOsaを培養細胞に発現させると、ステロイドホルモンレセプターを介する転写活性を上昇させた。この作用はARID欠失型のhOsaでは観察されず、ARIDの重要性が示された。また、野生型およびARD欠失型のhOsa-2を、Flag-tagをつけた形で、tetracyclineの濃度コントロールのもとに発現するcell line、TetOff16eとTetOffD6を作成し、hOsa-2を構成成分とする複合体の精製を試みた。両者のnuclear extractのglycerol gradient sedimentationでは、hOsa-2、BRG、BAF155、などのヒトSWI/SNFの構成タンパク質は類似の挙動を示し、ARIDの有無にかかわらず、高分子量の複合体を形成していると考えられた。BAF170についてはTetOff16eとTetOffD6で差が見られ、ARIDとBAF170の間に何らかの相互作用が存在する可能性が示唆された。また、高分子量fractionからimmunoprecipitationにより野生型、ARID欠失型のOsa-2を含むタンパク質複合体を精製したところ、両者の構成に差はなく、複合体形成においてはARIDの影響は認められなかった。
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