研究概要 |
酵母two-hybrid法を用いてクロマチンリモデリング複合体(SNF/SWI)の構成因子hSNF2a/bに相互作用する因子を新たに同定した。この因子(TMF/ARA160)のC末端領域が、hSNF2a/bのATPaseモチーフのN末端寄りの領域にin vitroおよびin vivoにおいて特異的に相互作用する。TMF/ARA160は核受容体のcoactivatorとして働くとされているので、本知見は以前から研究代表者らが報告しているSNF/SWI複合体と核受容体の協調的作用を説明できる。やや意外なことに、TMF/ARA160は核のみならずGolgi体にも局在することから、局在に関連した調節を受けている可能性が考えられた(Mori, K. and Kato, H.)。 ヒストンのメチル化が遺伝子発現を安定的に抑制または活性化することが、最近明らかになってきた。本研究ではヒストンH3のK9およびK27をメチル化する酵素G9aのノックアウトマウス作製し、遺伝子発現への影響などを調べた。G9a-/-マウスは発生初期に致死的であるが、G9a-/-ES細胞では真性クロマチン領域においてヒストンH3のK9のメチル化が著しく減少し、一部のアセチル化が増加していた。これは、SUV39H1/2-/-マウスでの結果と大きく異なることから、G9aとSUV39H1/2との機能の根本的な違いを予想させる。さらに一過性発現の系では、G9a融合蛋白はレポーター遺伝子を抑制したことから、G9aは真性クロマチン領域において、遺伝子を抑制すると結論した(Tachibana et al.)。 HIV TatのcofactorであるcyclinT1/cdk9複合体の構成因子を解析し、新たな因子(MCEF)を見い出した。MCEFは転写因子AF4ファミリーに属する因子で、ある種の白血病における転座の接合部である。この結果MCEFはALL1/MLL1と融合した蛋白を産生し、白血病を発症させるとされている(Estable et al.)。興味あることにALL1/MLL1もヒストンメチル化活性を持つ。
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