Na^+/H^+交換輸送体(NHE)には組織特異的に発現する様々なアイソフォームがあるが、私達はこれまで、これらのNHEが生理的な活性を発揮するためには、普遍的に発現するCa^<2+>結合タンパク質の一種、CHP(CHP1と呼ぶ)との相互作用が必須であることを明らかにした。また、別のCHPアイソフォームCHP2は細胞の癌化にともなって発現し、CHP2が発現するとNHE1は活性化状態になり、高い細胞内pHの維持、無血清に対する高い抵抗性など、癌細胞特有のフェノタイプを示すようになることがわかった。また、CHP1のEFハンドCa^<2+>結合モチーフの役割を解析した。CHP1のEF3およびEF4に二つのモチーフにCa^<2+>が高親和性(K_d=90μM)に結合すること、NHE1との相互作用によってCa^<2+>親和性が約40倍増加することを見出した。また種々の発現実験から、CHP1はCa^<2+>センサーとしては機能せず、EFハンドに強固に結合したCa^<2+>が重要な構造的エレメントとしてNHE1のpH調節に寄与することが示唆された。 NHE1によるpH調節には、H^+輸送部位とは別のH^+結合部位(H^+制御部位あるいはpHセンサー)が存在し、そのH^+親和性の変化が重要であることが示唆されている。今回そのような付加的なH^+結合部位の存在を証明するため、Na^+/H^+交換の逆反応(^<22>Na^+流出)を測定し、H^+輸送部位とH^+制御部位を速度論的に区別することに成功した。また、部位特異的変異導入の手法を用いてNHE1の第5細胞内ループのArg440残基およびGly455/Gly456残基がNHE1のpHセンサーの制御に重要であることを見出した。
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