研究概要 |
イノシトール3リン酸(IP_3)は、細胞外からの刺激により産生されるセカンドメッセンジャーであり、細胞内Ca^<2+>貯蔵器官上に存在するIP_3受容体(IP_3R)・Ca^<2+>放出チャネルに結合し開口させることにより、細胞外刺激の種類や強度に応じた複雑なCa^<2+>濃度上昇を細胞質内に引き起こす。これまでにIP_3Rには3種類のサブタイプが知られているが、それぞれが細胞内Ca^<2+>動態形成においてどのような違いを持っているかについては不明であった。本研究では、IP_3Rを介したCa^<2+>放出により形成される細胞内Ca^<2+>動態の形成機構を明らかにするために解析を行い、本年度は以下の成果を得た。 1.マウス肺より2型、および3型IP_3R遺伝子のクローニングを行い、Sf9細胞および内在する IP_3R遺伝子をノックアウトしたニワトリB細胞由来DT-40細胞に発現させ、それぞれの性質を同一条件下で比較することができる実験系を確立した(投稿準備中)。 2.上記実験系を用いて、各タイプのIP_3R受容体のチャネル活性を単一チャネルレベルで測定することが可能な実験系を確立した(投稿準備中)。 3.siRNAを用いて細胞に内在性に発現しているIP_3Rを欠失させる系を確立し、1型IP_3Rおよび3型IP_3Rにより形成される細胞内Ca^<2+>動態を観察することで、これらのサブタイプ間でCa^<2+>振動形成における役割が異なることを明らかにした(Hattori M.,et al.,印刷中)。 4.細胞質ドメインを欠失し、膜貫通領域のみを持つIP_3Rを培養細胞に発現させ、IP_3RのN末端側細胞質ドメインがチャネルを閉じた状態に保つために必要であることを明らかにした(Nakayama T.,2004)。
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