外界からの刺激に応答する際に、多くの細胞ではスパイク状のCa^<2+>上昇が周期的に起きるCa^<2+>オシレーションや、Ca^<2+>上昇が細胞内または周辺の細胞へと広がっていくCa^<2+>波のように、細胞質のCa^<2+>が複雑な時間・空間的パターンを取って増加する。このようなCa^<2+>濃度の変動パターンは外界からの刺激の種類や強度に依存して変化し、またCa^<2+>オシレーションの周波数が遺伝子転写の効率や特異性を制御していることも知られており、これらのパターンそのものが本質的な情報をコードしていると考えられている。 イノシトール3リン酸(IP_3)は、細胞外からの刺激により産生されるセカンドメッセンジャーであり、細胞内Ca^<2+>貯蔵器官上に存在するIP_3受容体(IP_3R)/Ca^<2+>放出チャネルに結合し、開口させることにより上記のような複雑な細胞質のCa^<2+>濃度上昇を引き起こす。IP_3Rは細胞質Ca^<2+>による正および負のフィードバック調節をはじめ、さまざまな分子により活性調節を受ける。また、IP_3Rにはこれまでに3種類のサブタイプが知られているが、それぞれが細胞内Ca^<2+>動態形成においてどのような本質的な違いを持っているかについては不明であった。本研究では、IP_3Rを介した細胞内Ca^<2+>動態の形成機構を明らかにするために、マウス肺より2型および3型IP_3R遺伝子のクローニングを行い、これまでに単離されていた1型IP_3Rを含め、それぞれのタイプを発現・解析を可能とする実験系を確立し、IP_3結合活性や細胞内局在におけるタイプ間の機能上の違いを明らかにした。さらに、1型IP_3Rの活性を特異的に小胞体内腔より制御するタンパク質同定、およびその活性制御機構の解析を行った。
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