研究概要 |
ミオシンスーパーファミリーの中でミオシンVは1分子レベルでアクチンフィラメント上をB端方向に連続的に運動する。この運動メカニズムは長いネックドメインを有する二つの頭を利用し、大きなステップ(〜36nm)で連続的に動くことが出来ると信じられてきた(首振り説)。しかし、今回、短いネックドメインしか持たないミオシンVIもアクチンフィラメント上を逆向き(P端方向)に1分子で連続的に大きなステップ(〜36nm)で運動することをミオシンVIを蛍光蛋白質タグである緑色蛍光蛋白質(GFP)との融合組換え蛋白質として作製し、全反射蛍光顕微鏡を用いた1分子イメージングと光ピンセットを用いた1分子ナノ計測の技術を利用して示した(Nishikawa S. et al. BBRC 2002)。また、ネックの短いミオシンV変異体も長い物と同様に大きなステップ(〜36nm)で連続的に動くこと(Tanaka H. et al. Nature 2002)、単頭のミオシンVでも大きなステップで連続的に動くこと(Watanabe M. T et al. PNAS 2004)にから考えてみても単なる首振り説ではミオシンの運動メカニズムの説明がつかない。一方、ATP存在下、ミオシンVIがアクチンフィラメント上を36nm間隔で協同的に結合する様子が電子顕微鏡像から観察され、ミオシンがアクチンフィラメントに結合するとミオシンの結合しやすい部位(ホットスポット)がアクチン上に形成され、ミオシンの連続的な運動にはアクチン側も重要な役目を果たしているという結果を得た。 アクチン側の直接証拠は、バキュロウイルスの発現系を用いてアクチンの組換え体作製に成功し、アクチンの表面電荷を変えたりしてアクチン側の役割を1分子レベルで検討することから得られつつある。また、電顕像で得られたこの静的な協同的な結合の存在は、運動方向性の異なるミオシンV, VI共、アクチンのそれぞれ運動方向の側に高い親和性の部分が伝搬していることが1分子イメージング法で得られ、動的な共同性を示唆する結果として確認された。ATP存在下、ミオシン結合時のアクチン側の活性化の詳細はアクチン表面の電荷の関与に着目し、慎重に計測、解析することでアクチン側の重要な役割を解明する。
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