ペルオキシダーゼはH_2O_2を用いて様々な物質の酸化を触媒する酵素である。この酵素の反応は、H_2O_2を分解して酵素がcompound Iになる過程と、compound Iが還元基質を酸化して元のresting状態に戻る過程からなる。生理的役割には、H_2O_2の除去と、ハロゲンやフェノール類の酸化という2面性がある。真菌由来の酵素結晶を、シーディング法により一辺約1mmの大きさにまで成長させた。この結晶の中性子回折実験を目指して、重水中にソークして重水素に置換した。この結晶について、日本原子力研究所(東梅村)で、中性子イメージングプレートを装備した回折計で中性子を照射した。幾つかの結晶について回折実験を行ったが、いずれの場合も回折点は観測できなかった。 一方、フェレドキシンは(Fd)細菌から動植物まで普遍的に分布する鉄硫黄タンパク質で、低い酸化還元電位を持ち、様々な酸化還元酵素に電子を分配する。植物型Fdは活性部位に2鉄からなるFeSクラスターを、細菌型Fdは4鉄からなるクラスターを持ち、これらの周囲に存在するNH…S水素結合が酸化還元電位を調節する。細菌型の一種であるB. thermoproteolyticusの4鉄Fdを、当研究室で開発した共発現系を用いて大量に発現させ、精製した。中性子回折実験を目指して、重水素置換した巨大結晶の調製を準備中である。また、植物型FdであるスギナFdについては、全ての水素を重水素に置換することをも含めて、中性子回折実験に適した結晶の調製を検討中である。
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