原生動物のゾウリムシは、温度下降刺激に応答して細胞の前端部附近に分布するCa^<2+>透過性のチャネルが一過的に開き、細胞膜の脱分極、泳ぎの方向変換が引き起こされる。このような温度変化に応答するチャネルの活性を阻害する化学物質を検索したところ、ネオマイシン、ルテニウムレッド、リゾチームなどの多価陽イオンが阻害作用を持つことが見つかった。このうちリゾチームによる阻害はリゾチームを熱変性させても、蛋白分解酵素で断片化したペプチドでも同じなので、リゾチームのもつ酵素活性は阻害作用に直接関わっていない。ゾウリムシ細胞表面でリゾチームの作用する場所を調べるために、蛍光色素(AlexaFluor660)をラベルしたリゾチームを作製しこれをゾウリムシに加えたところ、細胞の前端部附近に多く結合した。この場所は温度感受性チャネルの分布と一致する。これらの結果をもとに、リゾチームに結合する膜蛋白をアフィニティークロマトグラフィーによって分画・精製を試みた。現在までのところ、電気泳動のバンドとして10種類ほどのペプチドがとれているが、チャネル活性を持つペプチドの候補を絞り込めていない。一方、温度下降刺激によりCa^<2+>透過性のチャネルが開くには何らかの引き金が必要である。この引き金は細胞膜の構造変化によると考えられ、特に膜脂質部分の流動牲変化などが予想される。そこで実際にこのような変化が起きているかどうかを測定する蛍光顕微鏡装置を作製中である。
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