研究概要 |
本研究計画では、ATP駆動型分子モーターとしてその機構がよく研究されている骨格筋ミオシンのエネルギー変換部位に光の作用で可逆的に大きく構造変化を起こすフォトクロミック分子である架橋性アゾベンゼン誘導体、4,4'-azobenzene-dimaleimide(ABDM)を導入して、ATPの代わりに光照射によって駆動させることを目的として、その基礎的な実験を行った。 1.架橋性フォトクロミック分子の合成とモーター蛋白への導入 紫外線と可視光線照射によってアゾ化合物のcis-transの異性化変換が起こり、二つのSH基反応性マレイミド基の距離(crosslink span)が大きく変化する4,4'-azobenzene-dimaleimide(ABDM)の合成を既報告に従い行った。骨格筋ミオシン頭部Subfragment-1(S-1)のABDMによる架橋は、過去に報告されているYountらの二価性架橋試薬の確立した方法に従い、反応はCa^<2+>-ATPaseとEDTA(K^+)-ATPase活性の変化、ABDMの特性吸収およびSH基の定量試薬であるDTNBを用いて確認した。 2.架橋 S-1の性質と紫外線および可視光線照射によるcis-trans変換に伴う構造変化の解析 架橋されたS1に紫外線あるいは可視光線を照射することにより、ABDMがcisとtransになった二つの状態のS1(cis-S1とtrans-S1)を調製した。そしてcis-S1とtrans-S1においてその全体的な構造をX線溶液小角散乱用いて解析した。 これらの結果から合成したABDMはミオシンのエネルギー変換部位に結合した状態でcis-transの異性化を行い、それに対応するようにミオシン頭部の全体的な構造変化が起こることが示された。
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