研究課題
フォトクロミック分子は光の作用で可逆的に大きく構造変化を起こす分子で、有機高次構造体のロタキサンなどを用いた分子シャトルの駆動制御に利用されている。アゾベンゼン誘導体はフォトクロミック分子の代表的な化合物であり、紫外線-可視光線の照射でcis-transの互変異性に伴う構造変化を起こすことが知られている。本研究計画では、光駆動型分子機械の開発を目的として、キネシンとミオシンのエネルギー変換部位にアゾベンゼン誘導体のフォトクロミック分子を導入して、パルスレーザー光で高速に駆動させるための基礎実験を行った。1.パルスレーザー光照射条件の確立光によってCrosslink spanが大きく変化する二価架橋性のフォトクロミック分子ABDMとDIAABのモデル化合物であるアゾベンゼンを用いて、Cis-Trans異性化の速度をATPが加水分解される速度に近づける具体的な条件を検索した。そしてフォトクロミック分子のレーザー光に対する耐久性の測定も行った。アゾベンゼンはATP加水分解に対応する速い異性化を起こし、耐久性があることが示された。2.分子モーター変異体の調製とフォトクロミック分子の導入ABDMとDIAABを導入するために分子モーターであるキネシンのエネルギー変換部位であると考えられるループL5に2つのシステインを導入したキネシンの調製を行った。また微小管結合部位であるループL12にもシステインを導入した変異体を調製した。さらに細胞性粘菌ミオシンを用いてアクチン結合部位の一部にシステインを導入したミオシン変異体の調製行った。これらのキネシン、ミオシンのシステインを導入した部位にABDMあるいはDIAABを架橋を行い、分子モーターとしての生化学的性質を調べた。キネシンのL5変異体において微小管依存性ATPase活性がわずかではあるが光で制御できることが示された。
すべて 2006
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Journal of Biochemistry (In press)