研究課題
基盤研究(C)
ATP駆動型の分子モーターは、ATPの結合と加水分解に伴って発生する触媒部位での小さな構造変化をカム-シャフトのような機械的な機構で大きなレバーアームやネック領域の構造変化に変換している。この機械的なエネルギー変換の仕組みのどこかに人工的に構造変化を発生させてやれば、ATPと同様に分子モーターを駆動あるいは制御できることが期待できる。本研究では、人工的なエネルギー入力源としてフォトクロミック分子に注目した。フォトクロミック分子は紫外線-可視光線照射で極めて速い応答速度で可逆的に、大きな構造変化を伴う異性化を起こす。アゾベンゼンやスピロピランのような異性化に伴い、大きく物理的な性質を変化させるフォトクロミック分子は特に効果的に作用することができると考えられる。分子モーターに導入するためにシステインと特異的に結合する数種類のフォトクロミック分子を合成することに成功した。そして分子モーターのエネルギー変換部位の一部に特異的にシステインをもついくつかのモーター蛋白変異体を調製することができた。特に骨格筋ミオシンのエネルギー変換部位の一つであると考えられているSHI-SH2アゾベンゼン誘導体を導入して、紫外線-可視光線を照射するとATP加水分解で誘導されるレバーアームの折れ曲がりと同様な構造変化を発生させることに成功した。このように有機合成と遺伝子工学的な手法を融合させることにより、生体分子モーターに人工的なエネルギー入力デバイスを組み込むことができることを示すことができた。このような、新しい手法はATP駆動型のモーター蛋白ばかりでなく、巧妙な仕組みをもつその他の生体分子機械にも応用できることが期待される。
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