第2相異物代謝酵素群は、親電子性物質や酸化ストレスの刺激により転写レベルで発現誘導される。本研究では、この制御に関与する未知因子の単離同定を目的に、ゼブラフィッシュを用いた突然変異体スクリーニングを試みた。突然変異はエチルニトロソ尿素により導入し、スクリーニングは3世代交配法を用いて行った。突然変異体の探索は、5日幼魚の段階で、親電子性物質ジエチルマレイン酸及び金製剤オーラノフィン処理時のGstp遺伝子の発現誘導をin situハイブリダイゼーション法により観察する方法を用いた。これまで、125のF2ファミリーを解析し、形態形成異常を示す突然変異系統を70単離した。第2相誘導が異常となる系統の候補もでてきており、現在確認中である。一方、スクリーニングの迅速化・簡便化を目指し、誘導剤に応答して発光するトランスジェニックフィッシュの系統化を計画した。Gstpプロモーターの転写制御機構を初期胚を用いたGFPレポーター法により解析したところ、転写因子Nrf2がその発現誘導を司ることがわかった。欠失及び点変異レポーター構築を解析した結果、Nrf2による活性化には転写開始点上流約50bpに存在する配列(PARE配列と命名)が必要十分であることが明らかとなった。ゲルシフト解析の結果、Nrf2はPARE配列に直接結合することが明らかとなった。初期胚をジエチルマレイン酸で処理したところ、Gstp-GFPレポーター遺伝子由来のGFP発光が誘導された。この構築をゲノムに安定してもつトランスジェニックフィッシュの系統化を目指した。その結果、3系統得られたので、現在これらの系統の胚を用いた薬剤誘導実験を開始したところである。
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