われわれはすでにショウジョウバエMastermind(Mam)のヒトホモログhMam-1を同定し、さらにこれらの機能を見いだし報告している。今回新たにhMam-1とそれぞれ30%、20%の相同性をもつ二つのヒトタンパク質を同定し、それぞれhMam-2、hMam-3と命名した。Northern blotting法により各組織でのこれらのmRNAの発現を検索したところ、hMam-2は前立腺、精巣、卵巣等の比較的限局した組織で発現が見られたのに対し、hMam-3はhMam-1と同様多くの組織で発現が見られた。次にこれらのタンパク質について機能を検索した。hMam-2、hMam-3はいずれもhMam-1と同様に、1)Notch1細胞内ドメインおよびRBP-Jと複合体を形成して標的プロモーター内の塩基配列に結合する。2)Notch1細胞内ドメインあるいはRBP-Jそれぞれ単独とは結合せず、これら両者が存在してはじめて複合体へ参加できる。3)Notch1細胞内ドメインによる標的プロモーターの転写活性化を上昇させる。さらにこれら3種のMamタンパク質と哺乳動物の4種のNotchの細胞内ドメインとの相互作用を検索したところ、考えられる12種の組み合わせすべてにおいて、RBP-Jを含むDNA結合性の複合体が形成した。また標的プロモーター転写の4種のNotchいずれによる活性化も全3種のMamにより上昇したが、hMam-2は他の2種に比べNotch3とNotch4による転写活性化をより強く増強した。以上よりMamは高等真核生物においては類似の機能を持った少なくとも3つのメンバーを有するファミリーを形成しており、その存在が各種細胞におけるNotchシグナルの強度に多様性をもたらしている可能性が考えられた。
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