RNAポリメラーゼII最大サブユニットC-末端領域(CTD)は、種々のCTDキナーゼによってリン酸化されることにより、mRNA前駆体の転写とプロセシングの制御および両者のカップリングに重要な働きを持つことが明らかになって来ている。転写とmRNAプロセシングをカップルさせている分子メカニズムにアプローチするために、リン酸化CTDに特異的に結合するヒト因子の同定と機能解析を行っている。本研究は、これまでに当研究室で同定したリン酸化CTD結合因子である新規核蛋白質PCIF1および酵母mRNAスプライシング因子Prp40遺伝子と高い相同性を有するFBP11の細胞機能を解析することを目的としている。本年度は、高頻度相同組み換えを起こすことが知られているトリB細胞株DT40を用いたジーンノックアウト法による細胞機能解析を行うための実験を行った。トリESTクローンをもとにした5'RACE法によってPCIF1トリオルソログの全長cDNAのクローニングを行った。さらに、ゲノミックPCRによって単離したトリPCIF1遺伝子のゲノム断片をもとにノックアウトコンストラクトを作成し、ノックアウトを行っている。これまでにヘテロ接合ノックアウト(-/-/+)DT40細胞株を作成し終え、現在最後の遺伝子コピーを破壊したホモ接合ノックアウト細胞株を樹立中である。ヘテロ接合ノックアウトDT40細胞において、PCIF1蛋白質の発現レベルが著しく低下していることを観察した。同時に内在性RNAポリメラーゼIIのリン酸化状態の変化が認められた。FBP11に関しては、トリゲノミックDNAライブラリーをスクリーニングし、トリオルソローグ遺伝子のゲノミッククローンの単離をおこなった。
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