染色体複製のライセンス化に必須な因子Cdt1の細胞周期における制御機構の解明のため、高等動物細胞での解析を行っている。 (1)Cdt1タンパク質量の細胞周期での解析 ヒトHeLa細胞において、Cdt1タンパク質は、細胞周期のG1期に出現しS期の開始後消失することを報告していたが、同様のことがハムスター細胞でも見られることを確認した。続いて、S期において、Cdt1タンパク質はユビキチン-プロテアソーム系により分解されることを以下のように証明した。細胞にubiquitinとCdt1遺伝子を導入し、Cdt1タンパク質を免疫沈降後、ウエスタン法によりユビキチン化された高分子量型Cdt1が沈降されることを確認した。続いて、ユビキチン-プロテアソーム系に変異を持つハムスター温度感受性変異株tsBN75(ubiquitin活性化酵素E1に変異)とts41(E3酵素の一つSCFの機能に変異)細胞を用い、S期においてCdt1タンパク質は、許容温度32度Cではほとんど存在しないが、高温下40度Cでは安定に蓄積することを認めた。 (2)Cdk-サイクリンによる安定性の研究 ユビキチン結合酵素SCFは、Cdk-サイクリンによりリン酸化されたタンパク質を認識して分解することが知られている。Cdt1タンパク質のアミノ酸配列から、Cdk-サイクリンが結合するCy-motif及びリン酸化を受ける部位が存在する。Cdk-サイクリンによるリン酸化と分解の関係を調べるため、これらの部位に変異をもつCdt1を構築した。現在、Cdk-サイクリンとの結合、細胞内での安定性の関係を調べている。ガンセンター藤田博士との共同研究により、Cdt1がcdc2-サイクリンAと結合することを確認している。
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