細胞周期において、染色体の複製が正確に一回のみ行われることにより遺伝情報が維持される。我々は、複製のライセンス化に関わる因子Cdt1に焦点を当てその制御機構の研究を行ってきた。 (1)Cdt1のドメイン解析:Cdt1をN末、C末から削った変異体を作製し、Gemininや各種CDK-Cyclinの結合、核移行シグナルの存在領域の決定を行った。その結果、(a)GemininはCdt1の中程に結合する(b)Cdt1は、CyclinAとは結合するが、CyclinBおよびCyclinEとは結合しない。CyclinAは、N末領域と結合する。(c)N末に核移行シグナルが存在する。ことを明らかにした。 (2)Cdt1の分解制御と高発現の効果:Cdt1のN末(1-189)・C末(160-end)を発現する細胞株を作製し、S期でのタンパク質の安定性を調べることにより、N末が分解に関与することを明らかにした。CyclinA-CDKによるリン酸化がユビキチン結合因子Skp2の結合をうながし、分解を促進する。N末を欠き安定化したCdt1を293T細胞に高発現すると、4C以上のDNA含量をもつ細胞が高頻度で出現した。従って、Cdt1の高発現が、再複製をもたらすことが示唆された。また、Cdt1がGeminin非依存的に分解されることをより明確にするため、siRNAによりGemininをサイレンス化した状態でも、ユビキチン-プロテアソーム系で分解されることを証明した。従って、再複製の抑制のため、S期開始以降Cdt1は分解とGemininによる抑制という独立な機構により厳密に制御されていると結論した。
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