研究概要 |
今年度は、ポリグルタミン凝集体形成とp97/VCPホモログとの関連性を検討し、以下の結果を得た。 1:線虫の体壁筋で蛍光緑色タンパク質(GFP)を結合した長さの異なるポリグルタミン鎖(polyQ32,40,56,79)を発現させ、鎖長が40を越えると凝集体が形成されることを確認した。 2:凝集体をつくらなければ細胞全体に分散して存在しているが、形成された凝集体は細胞質にのみ存在した。凝集体の細胞質局在はポリグルタミン鎖が40でも56でも79でも同じであった。 3:凝集体は胚発生の時期から観察された。すなわち凝集体形成は加齢には依存しなかった。ポリグルタミン凝集体形成が発生過程に及ぼす効果は特に認められなかった。また、形態形成・成長速度・運動能にも影響は認められなかった。 4:このときp97/VCPホモログ(C41C4.8,C06A1.1)やその近縁タンパク質(MAC-1)をそれぞれ共発現させると、いずれの場合にもpolyQ56凝集体形成が部分的に抑制されることを見いだした。このことは、p97/VCPおよびその近縁タンパク質(AAAシャペロン)とポリグルタミン凝集体形成との関連性、すなわちAAAシャペロンが凝集体形成を阻止することを示唆している。 5:ヒトでは1種類のp97/VCPしか存在しないが、線虫では2種類存在する。これらの機能を解析するために、それぞれにのみ作用するdsRNAを用いてRNAi assayを行なった。それぞれ単独ではなんら効果を示さなかったが、両者を同時に用いると胚性致死の表現型を示した。このことは2種類のホモログは機能的に相補的であることを示している。このときの胚を電子顕微鏡で観察すると、多数の空胞が観察された。これはp97/VCPは膜融合(小胞体・ゴルジ体・核膜)に重要な役割を担っているというこれまでの知見と一致している。
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