筆者らは、Xenopus卵からDNA複製開始に必要なDUFを精製した。DUFは、分子量140kDa(Cdc68p/Spt16pの類似体)と87kDa(SSRP1)のサブユニットから成り、二重鎖DNAに結合して二重鎖に負のねじれを導入する活性と、コアヒストンに結合して、クロマチン構造を緩める働きを持つ。本研究では、ヌクレオソーム構造に対するDUFの作用をしらべる。また、クロマチン構造をとったDNAの複製に対するDUFの作用を調べることによって、真核細胞のDNA複製開始に必要なクロマチンの構造変化の機構を解明することを目指した。さらに、複製以外のDNAの動態におけるDUFの機能を調べることを目的とした。 酵母two-hybrid法を利用して、ヒトDUFの140kDaサブユニットと相互作用するタンパク質を調べたところ、CLK1、GU2、ribosomal protein L15、S26が結合することがわかった。また、免疫共沈殿法により、DNA複製開始部位に結合するORC複合体のサブユニットであるOrd1とヒトDUFが結合することがわかった。さらに、組換え体DUFを固定化したヵラムにOrc1が結合した。このことは、DUFがORC複合体と相互作用して複製開始に関わっていることを示唆する。 Xenopus卵抽出液系を用いて、DNA修復とRPAの動態を調べた。DNAに二重鎖切断を加えると、修復DNA合成が起こっている部分にRPAのフォーカスが形成された。また、ATM/ATRを阻害するカフェインはRPAフォーカス形成に対して影響を与えないことがわかった。このことは、RPAフォーカス形成にはチェックポイント機構は関与していないことを示唆する(東北大、榎本武美との共同研究)。
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