自食作用関連遺伝子、Apg-5、Apg12、およびLC3の哺乳類ホモログの産物に対する抗体を調製した。イムノブロット法により各抗体は対応する目的タンパクと特異的に反応することが確かめられた。はじめに、増殖したペルオキシソームの減数過程にあるラット肝の凍結切片を、これらの抗体を用いて免疫蛍光染色、Apgタンパクの局在を観察した。一部の自食胞は染色されたが、ペルオキシソームを取り囲む膜様構の造染色は認められなかった。次に、自食胞の蓄積を誘導するために、ペルオキシソームを増殖させたラットにロイペプチン投与して、30分、60分、90分、120分に肝臓の試料をとり、Apgタンパクを、イムノブロット法で観察したが、特にApgタンパクの増加はなかった。同じ試料の凍結切片をカタラーゼとApgタンパクについて二重免疫染色して観察した。30分に、微細な顆粒状のApg染色が見られ、60分には、一部のペルオキシソームに接してApgタンパクが染色されたが、小胞体を示す染色は見られなかった。次に、ペルオキシソームを増殖させたラット肝臓の肝細胞を初代培養し、次の実験を行った。1)細胞を4日培養し、Apgタンパクとカタラーゼを二重染色する。2)細胞を飢餓状態にし、Apgタンパクを同様に免疫染色する。3)自食作用阻害剤3-メチルアデニンで細胞を処理し、Apgタンパクを同様に染色する。また同時に細胞の抽出液のApgタンパクをウェスタンブロット法で分析した。ペルオキシソームに接するApgタンパクの染色は見られたが、小胞体を示すような染色はなかった。飢餓条件で、自食胞は増加し、3-メチルアデニン処理で、その増加は幾分抑えられた。カタラーゼが同時に局在する顆粒は20%程度であった。ウェスタンブロット分析では特にApgタンパクの増加はなかった。これらの結果は、哺乳動物の増殖ペルオキシソームの分解が自食作用で一部行なわれるとしても、その特異性は低いことを示す。また、Apgタンパクと小胞体の関連はなく、増殖ペルオキシソームを分離する膜は小胞体以外の膜に由来することを示唆する。
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