本計画は、tRNAのsplicingに関与するtRNA ligaseの細胞内局在と、tRNA前駆体の細胞内動態を明らかにすることを目的とした。研究期間である2年間に、これら2点を研究の中心として展開するとともに、tRNAの細胞内動態をin vitroで解析するための実験系の構築にも着手した。 ◆Rlg1pの細胞内局在を、特異抗体やタグ融合Rlg1p発現株、部分欠失変異体などを用いて検討した。Rlg1pは主に細胞質に分布し、核からは排除される結果が得られた。部分欠失多飲解析からは、Rlg1pの特定の領域に核局在化シグナルを見いだすことはできなかった。しかし、ミトコンドリア外膜に固定化したRlg1pが正常に機能することから、Rlg1pは核ではなく核膜の細胞質側に常在して機能することを明らかにした。 ◆^3H-uracilを用いたパルスラベル-ハイブリダイゼーション沈降法を開発し、特定のtRNA分子種の成熟過程を追う実験系を構築した。この方法とtRNA splicing endonulceaseの温度感受性変異を用いて、制限温度下で細胞質に蓄積したtRNA前駆体が、許容温度下に移すことで成熟体に移行することが明らかにした。これにより、in vivoにおいて前駆体tRNAが細胞質でsplicingされることが示された。 ◆異種酵母(S.pombe) tRNAの発現系と酵母接合を利用したヘテロカリオンアッセイを開発した。これにより、S.pombeのtRNAを発現していない核にこのtRNAの成熟体が検出されることから、細胞質へ輸送された成熟体tRNAが核内に再輸送されうることをはじめて明らかにした。 こうした結果は、「tRNAは成熟化の過程で核から細胞質への一方向的に動く」という考えの転換を強いるものである。
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