研究概要 |
高度に保存されたタンパク質脱リン酸化酵素であるカルシニューリンは、免疫抑制薬FK506の標的分子である。カルシニューリンの制御する生命現象は多岐にわたるがその詳細な分子レベルでの制御機構は明らかとなっていない。本研究はカルシニューリンを介するシグナル伝達経路を高等生物に極めて近いシステムを有するモデル生物である分裂酵母を用いて分子レベルでの解析を試みた。細胞増殖にカルシニューリン活性を必須とする変異株は免疫抑制薬に対して感受性を示すことに着目し、現在までに15種類の異なる遺伝子座位の変異体を取得している。これらの変異体の原因遺伝子として低分子量Gタンパク質であるRab/Ypt3,細胞周期に必須なリン酸化酵素であるCdc7,クラスリンAP-1複合体のサブユニットの一つであるmu-adaptinなどを同定してきた。本年度は新たにクラスリンheavy chain、および低分子量Gタンパク質Rabファミリーに属するRyh1、の機能解析を行った。クラスリンheavy chainの遺伝子ノックアウトを行った結果細胞増殖に必須であることが明らかとなった。さらにクラスリンheavy chainの変異体では細胞内輸送におけるエンドサイトーシスとエクソサイトーシスのステップに異常があることが明らかとなった。 また、カルシニューリンの制御サブユニットを同定し、分子薬理学、遺伝学、生化学を駆使した方法により、カルシニューリンの酵素活性には制御サブユニットの存在が不可欠であること、また活性化型のカルシニューリンに対して免疫抑制薬は高い親和性をもって結合することを証明した。
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