研究概要 |
小胞体-ゴルジ体間輸送の分子機構を明らかにすることを目的として、この輸送システムの3次元的構造を免疫電顕法を用いて解析することを試みた。そのため、細胞の包埋前に金コロイド・銀増感法を用いて抗原をラベルし、通常より厚い切片(〜250nm)を作製し、傾斜装置により立体写真の撮影、あるいは電顕トモグラフィーを行った。 1.精子細胞のゴルジ体の立体観察。ゴルジ期の精子細胞にはゴルジ体がよく発達してアクロソームの形成に関与する。ラット精巣を用いて、シスゴルジ体タンパク質のGM130を金コロイド・銀増感法を用いて検出し、250nm厚の切片を125kVの加速電圧で観察し電顕トモグラフィーを行った。その結果、精子細胞のシスゴルジ膜の細胞質側面にGH130が局在することを電顕トモグラフィーによって見事に示すことができた。今後、シスゴルジ網の形成機構を明らかにするため、小胞体からシスゴルジに至るどの部位からGM130が現れるか解析する予定である。 2.輸送小胞形成と小胞体膜タンパク質の残留機構。タンパク質の小胞体残留機構の1つとして、ゴルジ体へむかう輸送小胞から小胞体タンパク質が選別・排除され小胞体に留まる静的残留機構が存在する。C末端アンカー型膜タンパク質の1つであるミクロソーム型アルデヒド脱水素酵素(msALDH)は静的に小胞体に存在すると考えられている。そのC末端35残基をGFPのC末に持つキメラタンパク質は小胞体へのターゲッティング、残留に同様の挙動を示すことを明らかにし(Masaki, Kameyama, Yamamoto.J.Biochem.134,415-426,2003)、さらに免疫電顕法を用いてその残留機構を解析するシステムを開発できた。このキメラタンパク質を用いて、輸送小胞形成時に、いかにしてタンパク質の選別がおこるか3次元的に解析する予定である。
|