平成14年度は主に色素幹細胞の研究のための基盤技術の開発に充てた。 1.色素細胞特異的トランスジェニックマウスの作成 色素幹細胞の研究のための基礎的ツールとして各種トランスジェニックマウスを作成した。(1)色素幹細胞の生体内での動態を観察するために色素細胞特異的GFP発現マウスを作成した。GFPの発現解析により色素特異的に発現していることを確認した。(2)共同研究によりDCT(色素細胞特異的遺伝子)にCreリコンビナーゼをノックインしたマウスを入手し、レポーターマウスと交配させることで、色素特異的に遺伝子組み換えが起こることを確認した。これにより、今後、色素幹細胞内で各種遺伝子をコンディショナルノックアウトすることが可能になり、遺伝子の機能解析が容易になると期待している。(3)色素幹細胞内または上皮細胞内で後天的に遺伝子変異を誘導するために、CreER(タモキシフェン依存的に誘導されるリコンビナーゼ)を発現する2種類のトランスジェニックマウスを作成した。現在有効性を確認中。(4)色素細胞内で遺伝子を強制発現させる系を構築するために、色素細胞特異的Tva(RCASウイルスレセプター)発現マウスを作成した。現在有効性を確認中。 2.色素幹細胞の単離 マウス表皮より個々の毛包を単離する方法を開発した。この方法を用いて、上記の色素細胞特異的GFP発現トランスジェニックマウスから毛包を単離し、幹細胞が存在するバルジ部位を切り取った後に、タンパク分解酵素により細胞を解離させGFP陽性の色素幹細胞を単離することに成功した。 3.単一の色素幹細胞からのcDNAライブラリーの作成 色素幹細胞の維持に関わる遺伝子を同定するために、上記のようにして単離した個々の幹細胞よりcDNAライブラリーを作成した。今後このライブラリーを用いて、色素幹細胞の中での遺伝子発現パターンを解析すると同時に、サブトラクト法により幹細胞特異的な遺伝子を同定することを試みる。
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