課題(1)については、in situハイブリダイゼーション(ISH)と免疫組織化学を用いて、新たに視床下部POMCニューロン、オレキシンニューロンとMCHニューロンにDNPI mRNA発現を認めた。昨年度の結果と合わせ、この小胞性グルタミン酸輸送体が視床下部の多種類のペプチド作動性ニューロンに発現することが明らかになった。課題(2)については、蛍光2重免疫染色により下垂体後葉バソプレッシン分泌線維終末にDNPI陽性反応を認めたが、微細構造レベルでは高い非特異反応のために明瞭な結果を得るに至らなかった。課題(3)については、拘束ストレス負荷マウスの室傍核小細胞域において副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)遺伝子発現をISHにより検出し、NIHイメージにより画像解析による発現量を定量化した結果、対照群(非ストレス動物)に比べてシグナルの有意な低下を認めた。しかしながら、DNPI遺伝子発現には有意な変化を認めなかった。浸透圧ストレス負荷実験として本年度は高調塩水投与実験を行い、下垂体後葉ホルモン分泌核におけるDNPI遺伝子及びバソプレッシン遺伝子発現の変化をBAS5000とNIHイメージにより画像解析した。ラットに2%食塩水を4日及び7日間与え、視床下部の室傍核と視索上核におけるDNPI mRNA発現をISHとバソプレッシン免疫組織化学により解析した。4日および7日投与の両群において室傍核と視索上核でDNPI mRNAとバソプレッシンmRNAシグナルの有意な増加を認めた。また、ISHとバソプレッシン免疫染色を併用した手法により、DNPI mRNA発現がバソプレッシンニューロンにおいて増加することを確かめた。以上の結果は、視床下部ホルモン分泌終末内グルタミン酸輸送システムとしてDNPIが存在し、内在性グルタミン酸の終末レベルでの作用を制御することを示唆している。
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