研究概要 |
ポリグルタミン病のヒト剖検脳において変異蛋白質の蓄積に関する病理学的解析を行い、神経細胞脱落を指標とした従来の病変分布をこえて病態が神経系に広範に及んでいることを明らかにした。また、変異蛋白質の蓄積が神経細胞の核のみならず細胞体のリソゾーム系にも生じることを示した。こうした知見を基盤に、蓄積した変異蛋白質の分解に関する実験研究を進めた。 下オリーブ核肥大反応の実験的作成、ならびに発現遺伝子解析用試料の作製:C57BL/6J正常マウス(生後15週)20匹を対象として片側下オリーブ核肥大の実験的作成を行い、下オリーブ核肥大側と対側の2種の試料を収集した。各試料からtotal RNAを精製、T7-(dT)24Primerを用い逆転写反応でdouble strand cDNAを作製し、さらに精製後、BioArray HighYield RNA Transcript Labeling Kit(ENZO社)を用いてビオチン標識cRNAを作製した。 発現遺伝子解析:ビオチン標識cRNAを断片化した後、マウス遺伝子発現解析用プローブアレイ(GeneChip、Affymetrix社)にハイブリダイズした。ストレプトアビジン-フィコエリスリンを反応させた後、GeneChip核酸解析システム(Affymetrix社)を用いて発現遺伝子を解析した。解析した遺伝子約36,900種中、発現増加は約890種(2.41%)、発現低下は約530種(1.44%)であった。発現が増加している分子で最大の差は111.4倍であった。64倍以上が2種、32-64倍が10種、16-32倍が27種、8-16倍が95種であった。発現亢進遺伝子には転写因子、シナプス関連分子などの分子が多数含まれる一方、機能が全く未知のものは33%程度であった。ユビキチン関連分子、シャペロン分子は少なくとも十数種が確認された。
|