研究課題
基盤研究(C)
1)虚血性神経細胞死ORP150が小胞体に局在するストレス蛋白として、神経細胞を虚血ストレスから守りうるメカニズムを明らかにするため、本研究では海馬に対するカイニン酸負荷をパラダイムとして用い、ORP150の神経細胞保護効果を明らかにした。すなわち、興奮性アミノ酸によって引き起こされる細胞内カルシウム負荷が、小胞体に強制発現させたORP150によって緩衝され、致死的な細胞内カルシウムの上昇を抑え、神経細胞を虚血による細胞死から救済していることを明らかにした。さらに、小胞体の機能を保持することによって、虚血による神経細胞死を抑制しうることを示し、ORP150遺伝子導入による虚血性神経細胞死の制御の可能性に関しても検索した。2)マウスにおける小脳発生での検討。ORP150を過剰発現させたトランスジェニックマウス(TG)では、プルキンエ細胞に強いORP150の発現を認めるとともに、ORP150ノックアウトヘテロ接合体(KO)では、その発現は明らかに減弱していた。野生型マウスでは生後4日をピークにプルキンエ細胞層で活性化型Caspase-3の免疫陽性細胞が見られたが、TGでは陽性細胞数が有意に減少していた。Calbindin染色で評価したプルキンエ細胞数も生後4-20日にかけてTGで多く、KOで減少していた。小脳発生過程における神経細胞死にも小胞体を介する神経細胞死の関与を明らかにした。3)コンフォーメーショナル病モデルとしてmegsin transgenic rat(Meg Tg)の解析Megsinは東海大学の宮田らによって見いだされた新規serine proteinase inhibitorであり、Meg Tgのヘテロ接合体は、生後4-6ヶ月をピークに、海馬および黒質(SNpc)において神経細胞死が進む。このMeg Tgの黒質における病変が小胞体依存性の神経細胞死であることを示した。
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