OBCAMは、免疫グロブリンスーパーファミリーのIgLONサブグループに属する接着因子であり、免疫グロブリン様ドメインを3個持ち、GPIアンカーにより細胞膜に結合している。本科学研究費による研究では、OBCAMの機能とりわけニューロンの樹状突起への選択的局在と機能を解析することを目的としている。本研究期間内に得られた研究成果は以下である。 1)OBCAM及び同じサブグループに属するKilonの結合解析を行い、これらの接着因子が同種性、異種性結合することが判明した。 2)OBCAMは視床下部のバソプレッシン神経の樹状突起に特異的に存在するが、神経ペプチドである分泌顆粒に特異的に局在し開口放出により細胞膜へ移行することが判明した。 3)視床下部のバソプレッシン神経樹状突起には、OBCAMだけでなくKilonも神経ペプチドである分泌顆粒に選択的に局在することが分かり、両者が共存することが判明した。 4)OBCAMは、視床下部ニューロン樹状突起だけでなく培養した大脳、海馬ニューロンにおいても樹状突起に選択的に局在することが判明した。ただし、大脳や海馬においてはシナプス後膜に局在しておりシナプスでの可塑性に関与することが考えられる。この事実は、当初OBCAMが視床下部ニューロンに特異的な樹状突起選択的接着因子であると考えられてきたが、中枢神経系全般のニューロンに普遍的に存在する選択的接着因子であることが判明した。 OBCAMは、視床下部ニューロンだけでなく、大脳や海馬などの記憶学習に関与した部位に豊富に存在していることから神経系の顔製に関与した分子であると推測される。さらに、神経活動に依存した変化をすることから、接着因子が"静"に機能した細胞接着機能だけでなく、"動"的に働く因子であることが分かった。
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