E2F1は、細胞周期のG1/S期移行に重要な役割を果たしている転写因子である。分裂停止ニューロンにおいてもE2F1遺伝子は発現しているがその生理的な意義は不明である。我々は胚性ガン細胞(P19)由来の分化ニューロンにE2F1を強制発現するとアポトーシスを誘導することを既に報告している。我々は細胞周期の調節以外に、特に分裂終了細胞においてはアポトーシスの制御に関与しているものと考え、その分子的な機構を明らかにすることを研究の目的とした。 E2F1遺伝子のニューロンで果たす機能を解析するためにニューロンへのE2F1遺伝子導入実験を行った。分化したニューロンは分裂を終了しているため遺伝子導入効率が非常に悪く、ニューロンへの遺伝子導入は困難である。そのため分裂終了ニューロンへの遺伝子導入ベクターとして既に系の確立されたアデノウイルスベクター系を使用することとした。更に、細胞毒性がより微弱であるとの報告のあるバキュロウイルスベクター系の開発を検討している。バキュロウイルスベクターの開発は、大阪大学微生物学研究所、松浦善治教授との共同研究を遂行している。 現在E2F1をCMVプロモーターにより発現するアデノウイルスベクターを作製した。作製されたベクターを用いて神経培養細胞に導入した。導入されたベクターはいずれも高発現すること、更に神経細胞にアポトーシスを誘導することが示された。現在この実験系によりE2F1のアポトーシス誘導機序を検討中である。
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