研究概要 |
我々は、小脳プルキンエ細胞シナプスにおいてグルタミン酸受容体(GluR)δ2サブユニットのC末端と相互作用を示す新規タンパク質Delphilinをクローニングし、報告した。DelphilinはPDZドメイン,FH1,FH2ドメイン、イルドコイル構造などのタンパク質間相互作用に関与する機能モチーフを持つ、いわゆるscaffolding protein(足場タンパク質)と考えられる。更にDelphilinの機能を解明するためにBiacoreを用いた表面プラスモン共鳴法により、δ2サブユニットの他にDelphilinのPDZドメインを介して相互作用する分子の探索を試みた。Delphilinとδ2が共存する小脳プルキンエ細胞に存在する分子候補を探索した結果、モノカルボン酸トランスポーターMCT2のC末端とDelphilinのPDZドメインとが相互作用することが示された。C末端のアミノ酸1個を欠いたMCT2では、Delphilin-PDZとの結合が見られず、相互作用の特異性も確認された。小脳シナプス膜画分の免疫沈降実験などを行い、in vivoにおいても両者が相互作用する可能性をさらに検討している。また、我々はGluRδ2よりの細胞内シグナルがDelphilinを介して伝達される可能性を考え、リガンドは未だ発見されておらず、直接、リガンドで刺激してその細胞内シグナリングを解析することが現在のところ困難であるGluRδ2受容体に代わりに、リガンドで刺激することによりcytoplasmic tailからのシグナル伝達を模倣するようなキメラ受容体タンパク質を作製することを試みた。野生型α2-δ2キメラ受容体と、変異型α2(R586Q)-δ2キメラ受容体を構築し、HEK293細胞に発現させ、免疫染色法および電気生理学的手法を用いて解析し、我々が構築、発現させたα2-δ2キメラ受容体が、膜表面に発現しているとともに、AMPAの刺激によって活性化される機能的な受容体を形成している受容体であることが示唆された。GluRδ2及びDelphilinを介する細胞内シグナル伝達を解析する良いモデルを作ることができたと考えられ、更に「GluRδ2→Delphilin→」に続くシグナル伝達下流分子を探索すべく解析を進めている。
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