研究課題
基盤研究(C)
中枢神経系における神経細胞の生存維持機構については、未だ解明されていない点が多い。発生過程では大量の神経細胞死が起こり、その後は成熟した神経細胞が長期生存維持される。この成熟神経細胞も、神経変性疾患や神経毒によって細胞死に至る。従って、神経細胞生存維持にはアポトーシス抑制機構を含む強力な細胞死抑制機構が存在する。そこで、本研究ではサバイビンの神経細胞生存維持における役割を初代神経細胞含む培養細胞を用いた解析と組換えマウスの育種とを中心に明らかする。サバイビンは、IAP(inhibitor of apoptosis protein)ファミリーに属するアポトーシス抑制蛋白であり、多くの腫瘍で高発現している。我々は、サバイビンが分化した神経細胞でも発現していることをマウスの初代培養神経細胞と大脳皮質組織片の免疫染色によって見いだした。神経細胞を抗サバイビン抗体で染色したところ、ほとんど全ての細胞の核でその染色が認められた。一方、神経幹細胞では、細胞質分裂時の収縮環両側でのサバイビンの蓄積が認められた。また、アストロサイトは一部が強い陽性像を示した。さらに胎生16日令の大脳皮質を抗サバイビン抗体で免疫染色した。その結果、MAP2陽性の神経細胞核がサバイビン陽性となり、サバイビンが成熟神経細胞の発達・生存維持に重要な役割を担っている可能性を強く示唆された。一方、サバイビンがアストロサイトで発現していたことから、抗サバイビン抗体でグリオーマ患者脳切片を染色したところ、その悪性度に応じて染色性が増加した。従来の病理判定では悪性度が低いと判定されたものでも、サバイビン高発現の場合は予後不良であった。抗サバイビン抗体による組織染色はグリオーマの診断に有益である。さらにサバイビンをELISAで検出するシステムを作製し、尿を検査することで膀胱癌を診断できる可能性も示した。
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