本研究ではアストロサイトによるL-セリン合成・供給の脳発達と神経機能発現における生理的意義を個体レベルで明らかにすることを目的にしている。平成14年度はIox/P配列導入3PGDH(Phgdh)アリル(修飾アリル)を持つマウス胚性幹細胞(ES細胞)クローンの単離、それらをマウス初期胚に注入することによるキメラマウスの作成、および修飾アレルを持つF1個体の選抜を行った。遺伝子上の異なった部位にIox/P配列を導入した2種類のベクターを用いて相同組み替えを行い、その何れにおいてもIox/P配列が導入された修飾アリル持つES細胞の単離とそれらの寄与率の高いキメラマウスの作成に成功した。先行しているターゲッティングベクターに由来するキメラマウスからは修飾アリルを持つF1マウスが誕生しており、生殖系列への導入も確認できた。現在これらのF1マウスをCre発現トランスジェニックマウスと交配させることによって、exonの切り出された変異アリルを持つF2マウスの作成を行っている。またもう一種類のベクターを導入して作成したES細胞も高い寄与率でキメラマウスとなった。現在それらのF1マウスの遺伝子を解析している。修飾アリルの導入が確認後直ちにCreマウスと交配させF2マウス作製に取りかかる予定である。 また本年度はL-セリンの生理機能を理解する上で不可欠な輸送体蛋白質の発現解析も行い、L-セリンを基質とする中性アミノ酸トランスポーターASCT1がL-セリン合成酵素3PGDH(Phgdh)と同様に放射状グリア/アストロサイトの細胞膜に分布していることを免疫組織化学的に明らかにした。
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