研究課題/領域番号 |
14580757
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
神経化学・神経薬理学
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研究機関 | (財)東京都医学研究機構 |
研究代表者 |
小谷 政晴 財団法人東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 研究員 (10195737)
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研究分担者 |
久保 英夫 財団法人東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 研究員 (50178034)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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キーワード | 神経細胞分化 / 細胞表面抗原 / モノクローナル抗体 / マウス / P19EC細胞 / 遺伝子クローニング |
研究概要 |
神経細胞分化の分子機構は、様々な視点で研究されている。特に、転写調節、RNA転写制御、翻訳後調節や選択的スプライシングによる分化の分子機構の解析は、極めて急速に進展している。一方、中枢神経系において、神経幹細胞分化時期の異なる細胞集団をpositive選択によって単離可能な細胞膜表面抗原の解析については、極めて不十分である。細胞膜表面抗原は、(1)外部シグナルの細胞内への伝達、細胞と細胞および細胞と細胞外マトリックスとの相互作用などの機能を有することと、(2)細胞表面マーカーとして特定の細胞集団の同定に有効であり、さらにその抗原に対する特異的抗体を作製することによって、その抗体を用いて抗原陽性細胞をFACSソート等により生細胞として単離することが可能である。 そこで本研究は、神経細胞分化に伴って特異的に発現する細胞膜表面抗原の網羅的な解析とその抗原の機能的解析をP19EC細胞を用いて行った。その結果、RA(+)4細胞に特異的に発現する2つの抗原(分子量約90kDaのRANDAM-1と分子量約40kDaのRANDAM-2)のを特異的に認識するmAb(SKY-1とSKY-2)を得ることに成功した。SKY-1 mAbはRANDAM-1の糖鎖領域を、SKY-2 mAbはRANDAM-2のポリペプチド領域をそれぞれ特異的に認識していた。その詳細な解析から、RANDAM-1は未分化な神経系細胞に、またRANDAM-2は神経細胞系譜に分化する細胞に発現していることが分かった。次に、それぞれの分子の構造と機能について明らかにしていくために、それぞれの抗原の遺伝子クローニングを試みた。SKY-2 mAbを用いたRANDAM-2 cDNAの発現クローニングを行った。その結果、RANDAM-2は、その塩基配列と予想アミノ酸配列から、Schollら(1999)によって報告されたPA.2.26 antigen(腫瘍化したケラチノサイトに特異的に発現するシアロムチン様I型糖蛋白質)と完全に一致する分子であった。ホモロジー解析から、RANDAM-2は、マウスのgp38やOTS-8、ラットのE11やpodoplaninならびにイヌのgp40と極めて高いホモノロジーを有していることも判明した。しかしながら、これらの分子の生理的機能については、未だ不明である。RANDAM-2 mRNAは、胎生6.0(E6.0)日で発現が認められ、その領域は中枢神経系に限局していた。RANDAM-2/PA.2.26 antigenの神経系における発現時期や、発現領域に関する解析は、本研究が最初である。また、RANDAM-2のneurotransmitter phenotypeの解析から、RANDAM-2陽性神経細胞は、主にグルタミン酸作動性神経細胞であることを明らかにした。以上の結果から、RANDAM-2は、グルタミン酸作動性神経細胞へと分化する細胞系譜に恒常的に発現するI型細胞膜抗原であると結論された。 RANDAM-2の神経細胞分化における生理的機能やRANDAM-2陽性未分化神経細胞の単離とその細胞生物学的性状に関する解析については、今後の研究課題であると考えている。
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