研究課題
心臓のL型Ca^<2+>チャンネルの蛋白リン酸化酵素A(PKA)による活性増強はよく知られた現象である。しかし、神経性Ca^<2+>チャンネルであるP/Q型やN型チャンネルが、PKAによりどのような調節を受けるのか、その分子機構には不明な点が多い。この問題を解決するため、α1A(Ca_v2.1)およびα1B(Cav_2.2)Ca^<2+>チャンネルをアフリカツメガエル卵母細胞およびベビーハムスター腎(BHK)細胞に機能的に発現させた。PKAの特異的阻害剤(H89、Rp-cAMPS)により、α1A(P/Q型)チャンネル活性の減少が見られた。このPKA特異的阻害剤の効果は、蛋白脱リン酸化酵素阻害剤(オカダ酸、calyculin A、cyclosporin A)の前処理で抑制された。一方、PKAの触媒サブユニッ卜の細胞内微量注入により、P/Q型チャンネル活性の増強が見られた。パッチクランプ法(cell-attached)でα1Aチャンネル電流を観察したところ、PKAの特異的阻害剤は単一コンダクタンスを変えることなく、有意に単一電流を減少させることが分かった。また、PKA特異的阻害剤の抑制効果は、チャンネルα2/δサブユニットの共発現ではなく、βサブユニットの共発現で増強された。以上のことから、P/Q型チャンネルの一部は静止状態でPKAにより活性化されており、そのチャンネル活性は、リン酸化の程度と脱リン酸化の程度のバランスにより決まることが示唆された。一方α1B(N型)チャンネルに対しては、たとえチャンネルβサブユニットを共発現させても、PKA阻害剤は大きな効果を示さなかった。さらに、P/Q型とN型とのキメラチャンネルや、P/Q型のC末削除変異チャンネルを用いて、P/Q型チャンネルのC末が、PKAによるチャンネル活性調節に必須であることを確認した。
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