蛍光性タンパクの遺伝子を組み込んだベクターを用いて、レセプター特異的にグリアとニューロンを区別して染色し、神経活動に伴う内因性光学シグナル(細胞膨潤)はグリアが寄与するのか、グリアとニューロンの両方が寄与するのかを明らかにすることを目的に研究を開始した。 <内因性光学シグナル>脳スライスから得られる内因性光学シグナルがスライス全面にわたって一様ではなく、不均一な画像として得られることに興味を持った。この画像パターンはニューロンとグリアの分布に起因しているものと考え、あらかじめ電気生理学的に同定した細胞の膨潤を観察した。細胞の体積変化は2光子共焦点顕微鏡の3次元再構成画像を積分して正確に評価した(文献1)。生後2-3日及び生後3週齢のラットから海馬スライスを作成し、ウアバインでNa-Kポンプを抑制すると、どちらの週齢からも内因性光学シグナルを観察できた。次に灌流温度を40度にあげると、ウアバインを投与しなくても生後3週齢のラットでは内因性光学シグナルが誘起され、灌流温度に対する内因性光学シグナルの応答が週齢によって異なることが示された。 <GFP遺伝子導入マウス>ウイルスベクターによる一過性の発現を試みたが、発現効率の改善に時間がかかるため、トランスジェニックマウスで検討した。GFPの蛍光が酸素分圧の影響を受ける可能性が指摘されたため、トランスジェニックマウス心筋細胞の初代培養系で蛍光スペクトルを測定した。低酸素により蛍光スペクトルが長波長へシフトした(文献3)。またすでに試作した内因性光学シグナルを観察できる倒立顕微鏡では蛍光画像の観察が可能になった。今後はトランスジェニックマウスから海馬スライスを作製し、グリア細胞の寄与についてさらに検討したい。
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