研究概要 |
網膜神経節細胞の軸索は間脳の軟膜直下を伸長し視蓋へ投射するが前方にある終脳へは侵入しない。研究代表者は終脳由来の分泌型chondroitin sulfate proteoglycan (CSPG)の糖鎖,chondroitin sulfate glycosaminoglycan (CS-GAG)が網膜軸索伸長を抑制し、軸索が前方の終脳へ侵入することを妨げ、視蓋へ方向付けることを明らかにした。本研究は網膜軸索伸長に対するCS-GAGのタイプ特異的な効果を検討した。 CS-GAGsには複数のタイプがある。各タイプを認識する抗体を利用して、これらの免疫組織化学的分布様式をニワトリ胚において検討した。その結果、D型CS-GAGが終脳間境界で帯状に分布することが明らかになった。 クジラやサメ軟骨などに由来する各タイプのCS-GAG標品(生化学工業)のspotを培養基質上に作成し、網膜軸索の伸長に及ぼすspotの境界の効果を検討した。その結果、D型CS-GAGが特異的に網膜軸索の侵入を阻止することが明らかになった。 より生理的な条件でのCS-GAGの効果を検討するためにラット新生児大脳および小脳からph0spha-canを精製し、CS-GAG組成を検討した。それぞれ0%および4%のD型CS-GAGを含有したので、これらで作成したspotの網膜軸索伸長に及ぼす効果を比較検討した。その結果、D型CS-GAGが軸索侵入阻止効果を増強することが明らかになった。 以上の結果は軸索路形成期の胚においてD型CS-GAGが網膜軸索の終脳への侵入阻止に機能していることを示している。今後、網膜神経節細胞軸索のCS-GAG受容機構の基礎を明らかにするために合成CS-GAGを調達し、軸索侵入阻止効果をin vitroおよびin vivoで検討する。
|