連続磁気刺激(rTMS)に関する研究 rTMSの臨床効果については以下の研究を2年間で行った。パーキンソンにしては日本全国規模の効果判定を行い、シャム刺激と比較して有意な効果が得られない事を報告した(文献2)。排尿障害、急性の痛みのに関しては治療効果を認める報告をした(文献1、4)。さらに、rTMSの効果を考える時には、刺激コイル直下の大脳皮質部位だけでなく、その部位と密接な連絡を持つ離れた部位への刺激が及ぼす効果も考慮すべきであることを報告した(文献3)。さらに猿にrTMSを行い、そのときの脳の代謝の変化などを検討した。まず、猿用のコイルを作成した(図書)。このコイルにより、猿の脳でも効果的に限局した部位のみに、電流を誘発できることを証明した。このコイルにより猿の運動野を連続刺激したときの、大脳基底核でのドーパミン代謝の変化を分析した(文献5)。運動野の連続磁気刺激により、腹側線条体での内因性ドーパミンの放出が上昇した。このドーパミン代謝の上昇が、本刺激の鬱病などの治疲機序を一部説明していると考えた。今後は、マイクロダイアリシスによりドーパミンの放出を確認するサルでの実験を計画している。さらに、rTMSの今後の臨床応用が期待されるため、いくつかの神経疾患に刺激パラメータを変えて、治療を試みる予定である。 脳深部刺激(DBS)に関する研究 視床下核のDBSで治療を行っているパーキンソン病患者に関して、刺激オンをオフでFDG PETを行い、両者を比較した。刺激オンの時はオフの時と比べて、刺激側の前運動野と前帯状回で糖代謝の亢進が観られた。DBSがパーキンソンなど運動障害に効果を示す機序の一つとして、前運動野の機能亢進が関連していると結論した。
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