研究概要 |
島皮質における情報処理様式をニューロンレベルで明らかにするため,ラットまたはサルの島皮質より単一ニューロン活動を記録し,情動行動課題や報酬性および嫌悪性の味覚刺激に対する応答性を解析した. 1.ラット島皮質に関する研究.覚醒下ラットの頭部をヘッドホルダーにより脳定位固定装置に無痛的に固定した状態で,あらかじめ座標を同定(推定)しておいた島皮質から単一ニューロン活動を記録し,口腔内チューブを通して与えた食塩水(塩味),ショ糖溶液(甘味),クエン酸溶液(酸味)および塩酸キニーネ溶液(苦味)に対する応答様式を解析した(ラットは,食塩水およびショ糖溶液に対しては嗜好性を示すが,クエン酸溶液には嗜好性を示さず,塩酸キニーネ溶液は嫌悪する).本年度は総数45個のニューロン活動を記録したが,その内22個(48.9%)が味覚応答を示した(味覚応答ニューロン).これら味覚応答ニューロンは,最も強く応答する味覚溶液の種類より,食塩ベストニューロン(6個),ショ糖ベストニューロン(6個),クエン酸ベストニューロン(5個),塩酸キニーネベストニューロン(4個)およびグルタミン酸ナトリウムベストニューロン(1個)に分類できた.また,45個の中には水に選択的な応答を示すニューロンや味覚刺激後の洗浄時に特異的に応答するニューロンもあった.食塩ベストニューロンと塩酸キニーネベストニューロンでは各最適味覚刺激以外の味覚刺激にはあまり応答しないが,ショ糖ベストニューロンではショ糖溶液への応答とクエン酸溶液への応答が比較的似ており,また,クエン酸ベストニューロンでは,食塩水以外の溶液で応答が比較的よく似ていた. 2.サル島皮質に関する研究.昨年度中にニューロン活動記録実験(情動行動課題遂行下のサル島皮質から単ニューロン活動を記録)はすべて終了しており,現在,研究成果をまとめ論文を投稿中である.
|