研究概要 |
神経成長円錐は、神経細胞の先端に形成される細胞構造で、活発な接着形成と伸展を行なう。また、標的細胞に出会うとシナプスを形成する。シナプスは接着点としての性質も持つことから、神経成長円錐部の接着形成はシナプス形成の初期過程を一部含んでいる可能性がある。これまでの我々の研究から、神経成長円錐部は伝達物質を含むベシクルをもっていることまた、興奮と共に伝達物貴の放出を行なうことが明かになっている(Tatsumi Katayama 1999 Neuroescience)。また、最近の研究から伝達物質の放出とともに、神経成長円錐部で接着形成がおこることが分かってきた。我々は、血管内皮細胞における接着蛋白分子の集合過程の研究をおこない、その場合においてエクソサイトシスと接着形成の間に密接な関係があることを見出している(Kawakami Tatsumi Sokabe 2001)。 この研究では、上記の研究から細胞接着分子が伝達物質の放出とともに、神経成長円錐部で細胞表面にあらわれて接着形成を起こすかどうか検討する。 インテグリンは神経成長円錐部に集積して接着形成を起こす代表的な分子である。このインテグリン分子の細胞内輸送や細胞表面での動きはこれまで直接的に可視化するよい方法がなかったために不明のままである。本研究では、インテグリン分子を蛍光抗体で標識して近接場光で観察する。これによって、インテグリンが成長円錐部に運ばれていく輸送のメカニズムや、成長円錐の突起部へ集合し,さらに膜表面の特定の場所に集合して接着形成を行う分子過程を直接的に観察することができた。そこから、エクソサイトシスによりインテグリン細胞膜に供給されること、また、エンドサイトシスによって逆に細部膜から回収されることがわかった。これらについて、生物物理学会2002年や生理学会2003で発表した。また研究の一部はHoshino Tatsumi Nakashima Sokabe Neurosceinece 2003 accepted に発表予定である。
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