研究概要 |
神経成長円錐は、神経突起の先端に形成される細胞構造で、活発な接着形成と伸展を行ない、標的細胞に出会うとシナプスを形成する重要な構造である。これまでの我々の研究から、神経成長円錐部は伝達物質を含むベシクルをもっていることまた、興奮と共に伝達物質の放出を行なうこと、さらに伝達物質の放出とともに、神経成長円錐部で接着形成がおこることが分かってきた。 この研究では、上記の研究成果を元にして細胞接着分子がエクソサイトシスによる伝達物質の放出と同時に、細胞表面にあらわれて神経成長円錐部の接着形成を実現するかどうか検討し、まさにそれが起きている事を確認することができた。 本計画ではインテグリンに注目して研究を行なう。インテグリンは神経成長円錐部に集積して接着形成を起こす代表的な分子である。このインテグリン分子の細胞内輸送や細胞表面での動態は、これまで直接的に可視化するよい方法がなかったために不明のままである。本研究では、インテグリン分子を蛍光抗体で標識して近接場光で観察した。これによって、インテグリンが成長円錐部に運ばれていく輸送のメカニズムや、成長円錐の突起部への集合し,さらに膜表面の特定の場所に集合して接着形成を行う分子過程を近接場光照明で直接的に観察し分析した。また、エクソサイトシスの標識色素であるFM4-64を同時に細胞に導入して、エクソサイトシスによるインテグリン分子の細胞表面への移動があるかどうかを検討した。そこからエクソサイトシスとインテグリンの膜への移動には強い関連がある証拠を得ている。 本研究の成果を一言でいえば、蛍光ラベルされたインテグリンを細胞内で生きた状態で観察し、神経成長円錐の接着(足場形成)がエクソサイトシスによるインテグリン分子の膜移行で実現されることを検証したことである。
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