研究概要 |
脳弓下器官への入力神経について,(1)脳弓下器官へ投射する神経の起始領域,(2)その投射ニューロンに含まれる神経化学物質,(3)同定された起始領域から脳弓下器官へ投射する神経の標的構造,(4)その神経終末が持つ神経化学物質,(5)神経終末の標的が神経要素ならば,その脳弓下器官ニューロンの支配領域,について,本年度は(1)から(4)を重点的に行う計画であった. 基礎となる,脳弓下器官における神経終末の種類の研究がまだ不十分のため,その検出を行った.結果は次のとおり(カッコ内に,吻側,中央,尾側レベルの免疫陽性終末の分布密度を+の数で示す),serotonin(++,+++,++),Met-enkephalin8(++,+++,++),catecholamine(++,+,++),LHRH(+,++,+), bombesin(+,+,-),neuropeptide Y(+,+,-),neurotensin(+,+,-),acetylcholine(+,+,-),somatostatin(+,+,-),galanin(+,+,-),nitric oxide synthase(細胞体も:++,++,++),substance P(+,++,-). (1)について,脳弓下器官への逆行性トレーサ注入後,視索前域から延髄までの広い範囲にわたり多くの領域に標識細胞が見られた.これら起始領域と脳弓下器官における免疫陽性反応を比較したのち,次年度以降に(2)を行う.(3)および(4)について,起始領域のひとつである正中視索前核に順行性トレーサを注入し電子顕微鏡観察すると,入力神経終末は脳弓下器官の神経細胞体や樹状突起にシナプスをしていたほか,血管周囲やグリア細胞にも隣接していた.また,LHRH, neurotensin免疫陽性終末も,各要素に対して同様の配置関係にあった.結果の一部は,第108回日本解剖学会総会,第26回日本神経科学学会,3rd International Society for Autonomic Neuroscienceで発表予定である.
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