研究概要 |
脳弓下器官への入力神経について,脳弓下器官へ投射する神経の起始領域およびそれに含まれる神経化学物質,脳弓下器官へ投射する神経の標的構造およびその神経終末が持つ神経化学物質,標的となる脳弓下器官ニューロンの支配領域,の各項目を明らかにすることにより研究を進めてきた. 昨年度までに,この研究の基礎となる脳弓下器官に存在する神経終末の種類や,上記各項目について部分的に結果を得た。脳弓下器官にはアミン性終末・コリン性終末・多種の神経ペプタイド免疫陽性終末が見られ,このうちLHRHやneuorotensin免疫陽性終末は脳弓下器官の神経細胞体や樹状突起にシナプスをしていた.また,内側中隔核や対角体核のアセチルコリン性神経細胞の一部,弓状核,青斑核,孤束核,延髄腹外側部のneuropeptide Y免疫陽性神経細胞の一部が脳弓下器官に投射していた。 今年度は起姶領域について,さらに知見を得た.Bombesin免疫陽性終末は青斑核,延髄腹外側部から,galanin免疫陽性終末は視索前域・視床下部の室周囲部,内側視索前核,背内側核,弓状核,青斑核などから投射しており,これは来年度の日本解剖学会総会および日本神経科学学会で発表する.Substance P, Met-enkephalin 8, somatostatin, neurotensinについても今後詳細を検討し学会あるいは学術雑誌に発表する.上に述べたように,脳弓下器官へ投射する神経細胞は脳の全般に見られるが,密集して見られたのは正中視索前核だけであった.その投射線維は神経細胞体や樹状突起にシナプスをしていたほか,血管周囲やグリア細胞にも隣接していることを昨年度までに明らかにしていた.脳弓下器官からの主要な投射先である室傍核へ投射する神経細胞と正中視索前核からの投射線維との関係を調べたが,両者間のシナプスはこれまで見いだされなかった.この両者の関係は,これとは異なる起始領域と投射先とを持つ神経間の関係と共に,今後の検討課題と考えている.
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