私は、これまで成獣孤束核において、ニューロンの形態とシナプス結合様式の明瞭な分化傾向の存在を明らかにしてきた。このニューロン結合様式の分化は、生後1週を境界に急激に完成されることを最近見出した。そこで、グルタミン酸性およびGABA性シナプス結合様式の変化の実態を機能形態解析することを研究の目的とした。このシナプス結合様式の生後変化は特定のニューロンにおいてグルタミン酸性シナプスおよびGABA性シナプスの形成と消失が起こっていることを示唆しており、シナプス前要素側での軸索側枝の形成および退縮、シナプス後要素側でのグルタミン酸受容体およびGABA受容体のサブユニット構成変化等の可能性を調べた。これまで特定のニューロンにおいて生後1週を境にGABA性シナプス活動が消失することを示してきたが、このGABA性シナプス応答はその特異的阻害剤実験からA型GABAタイプの受容体を介することを明らかとした。この現象の分子的機序として、A型GABA受容体のサブユニット構成のシナプス後要素ニューロン細胞膜上の発現変化について、in situ hybridization組織化学法と免疫電顕法の2つの手法を用いて検討した。また、GABAシナプス後電流の薬理学的特性の生後変化についても検討した。 A型GABA受容体は、主にα1-6、β1-3、γ1-3のサブユニットの内から脳内において部位特異的に数個のサブユニット構成でチャネルを形成している。このうち、γサブユニットはこれらのチャネルをシナプス後膜に繋ぎ止めておくのに重要な役割を果たしていることが報告されている。そこで、γサブユニットに注目し、生直後の特定のニューロンにおいてこれらの遺伝子の発現変化が起こっているのかどうかを、in situ hybridization組織化学法によって確認した。その結果、小型ニューロンにおいて、生後6日を境に、GABA性シナプス活動の特異的消失に伴って、γ1サブユニットの発現が完全に停止することがわかった。また軸索・細胞体シナプスの劇的減少がこの時期に一致して確認された。GABA電流のベンゾヂアゼピン感受性がこの時期を境に大きく変化することもわかった。
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