神経幹細胞は細胞増殖因子や細胞分化の調節因子により調節されている事が示唆されている。神経幹細胞の増殖はbFGF或はEGFを含む培地で確認されているが、増殖はこれらのリセプターとの結合により起こる。この両者のリセプターの神経幹細胞での発現時期が、細胞系譜に影響をしていることも示唆されている。本研究では、前脳より比較的迅速に、かつ期待する純度で初代培養系に適応できる細胞分取法を用いて、培養系で細胞系譜について研究することをテーマとした。胎生12日の前脳からの細胞細胞懸濁液をフローサイトメトリーにて解析すると12%がA2B5陽性細胞であった。また、この時期の細胞はnestin陽性細胞が顕著であり、A2B5陽性細胞との二重陽性細胞も認められた。これらの細胞をそれぞれ分取して分化培地にて培養するといずれの系でもneuronが先行して出現し、のちにglia系細胞が認められた。従って、nestin陽性細胞のクラスターは多分化能をもつとともに、その細胞系譜はrandomであるとこが示唆された。これは、glia系前駆細胞はbFGFの影響をある時期まで受けないことを示唆している。一方、EGFは培養8-10日目からneurospheresが認められ、応答していることからbFGFとの差異が明らかであろう。今後、レセプターとの関連から追求していきたい。 分取して培養した神経幹細胞は増殖しながらneurospheresを形成するが、培養から6日目頃から激減する条件では、共存する細胞により非接着条件で回復することから、生存に関与する因子が示唆された。現在、検討中である。 神経幹細胞およびある程度分化へ制限された細胞である前駆細胞を含めて、分化の阻止の条件が確立されれば、その臨床応用に貢献できると考えられる
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