Naxが発現する脳室周囲器官の細胞を単離し、イオンイメージングを行った。細胞外ナトリウムを5〜25mM上昇させると、細胞内ナトリウム濃度の上昇が野生型マウス由来の細胞で観察された。Nax遺伝子欠損マウス由来の細胞ではこの反応は消失していた。すなわち、Naxは細胞外ナトリウム濃度の上昇に応じて活性化されるナトリウムチャンネルであることが示唆された。次にNaxの発現誘導をすることのできる細胞株を確立した。本細胞にNaxの発現を誘導すると、微弱な応答ではあるがNax由来の細胞内へのナトリウムイオン流入が観察することができた。よって、Naxは細胞外ナトリウム濃度依存性ナトリウムチャンネルという全く新しい特性を有するナトリウムチャンネルであることが明らかとなった。 次に遺伝子欠損マウスの塩分摂取行動の基本特性に関して、飲水量自動計測装置を利用して脳のナトリウムセンシング機構について解析を行った。脳室内にカニューレを挿入し高張ナトリウム溶液によってNaxが発現している脳室周囲器官を直接刺激した。その結果、野生型マウスは脳室内のナトリウム濃度の上昇に伴ってナトリウムの摂取行動が抑制されたが、遺伝子欠損マウスでは抑制が全く見られなかった。さらに、Nax発現ベクターによって遺伝子欠損マウスの異常行動をレスキューすることに成功した。これらの結果から、Naxは体内のナトリウム恒常性に必須のセンサーチャンネル分子であることが明らかとなった。
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