大脳皮質の神経回路構築を明らかにするために、まず非錐体細胞の一つであるダブルブーケ(DB)細胞の神経終末を詳細に観察し、その出力構造を明らかにする事を目的とする。ラットを実験動物に用い前頭皮質のスライスを作成し、ホールセル記録法でDB細胞から電気的な特徴を記録解析し、バイオサイチンを注入した。固定後、ABC液で反応しDAB染色を施しエポンに包埋した。これらの細胞をNeurolucida解析システムに入力し神経終末間距離や分岐頻度等の形態的な特徴を光学顕微鏡で3次元的にとらえ数値化し、統計処理を行った。その結果、DB細胞は、分岐の頻度が高く、神経終末が粗に分布するという特徴を有する事を統計的に証明し、他の非錐体細胞と区別する事ができた。その後、軸索部分を電子顕微鏡で観察し、3次元再構築画像解析ソフトで前、後シナプス要素の3次元像を再構築し、その出力構造を解析した。カルレチニン(CR)を含有することを免疫組織化学法であらかじめ同定したDB細胞を3個、CRFを含有するDB細胞を1個解析した。その結果、CR陽性DB細胞のターゲットは、約1/3が興奮性終末が多く入力する非錐体細胞の樹状突起の幹であった。また、約1/3は棘突起が多く存在する錐体細胞と思われる樹状突起の幹であった。残りは、棘突起の頭部に入力していた。その棘突起には興奮性入力を認めたので、特定の入力信号を抑制することを示唆された。細胞体に対する入力は少数存在した。また、CRF陽性DB細胞のターゲットは、約1/4が興奮性終末が多く入力する非錐体細胞の樹状突起の幹であり、約1/2は棘突起、他入力共にほとんどない非錐体細胞と思われる樹状突起の幹であった。残りは、輿奮性入力が一つある棘突起の頭部に入力していた。細胞体に対する入力は認めなかった。以上の様に、皮質には2種類のDB細胞が存在し、それぞれ異なるシナプス結合をしている事が証明できた。
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